2015年10月09日

「はい、こちら2020東京五輪」第三章その4

■「初めて読まれる方へ」<これまでのあらすじと今後の展開>■
【以前中堅の広告代理店「くろくま広告社」で働いていた僕は、商学部出身の船橋君とは同期入社組で、後に美大の後輩である毒舌家の安藤も入社した。彼とは学生時代からなんとなく馬があう仲である。船橋君は会長の一人娘美智子さんと結婚し事実上の婿殿的存在。美智子さんは前会長の跡を継ぎ、船橋君は代表権のないCEOとなった。僕はその夫妻の娘みどり君の初恋の対象になった。当然、巷的にいえば不倫となるが、そんなどうでもいい噂など気にしてはいられない。こう見ても僕は立派な?家庭人なのだ。イケメン系だけれども、野猿系の妻恵理子と同じく野猿系の一人娘であるメタボリックな千鶴がいる以上は不道徳な事は出来ない。だが、プラトニックな淡い恋は誰にも渡すわけにはいかないし、公言するわけにもいかない。ましてや、親と子の年齢差がある恋沙汰などできるわけがない。といっても、恋は恋。透明な慕情は失いたくはない。みどり君は大学を卒業し、都庁に就職した。だが、将来はくろくま広告社の音頭をとることにはなるのだろう。その時までの修業なのかもしれない。千鶴は大学に行かずJSCの非正規社員で働き出した。妻の恵理子はガンを患い、僕はその日から作家を目指し、ボランティアをしながら細々と努力をしている毎日。そんなとき、東京都が2020夏季五輪の招致都市に選ばれた。「くろくま広告社」は五輪関連の仕事は来ないが、知人のアートディレクターとは付き合いが深い。招致が決まって上手く行くと思いきや、五輪での運営側の問題が深刻になってきた。今後どうなるのか。固唾をのんで見守りながら良い方法をと、僕と船橋と安藤がドキュメンタリータッチで話を進めていく・・・・・・】


<第三章:その四>


 2020東京五輪のエンブレム新案や新国立建設白紙案の行方に暗雲が漂いはじめた。問題の大会組織委員会マーケティング担当者や、クリエイティブディレクターが外されたのは良いのだが、密室での非公開では国民の理解が得られないだろう。佐野エンブレムがCMから消えて違和感が消え失せたようにも見える。ブラックエンブレムは視覚的にストレスが溜まると安藤が言っていた。素人の人もそう思うに違いない。新国立は作らなくて、開会式は街中でというとんでもない案も飛び交っている。それに輪をかけて、舛添氏は日中韓同時開催という目に余るサプライズも否定はしていない。ザハ案が日本の建築家の了見の狭いわがままで反故にされたのは痛かった。招致コンペでは責任を持って建設しますと言い切った安倍氏は我関せずといった態度に出ている。我ら三人の賢者?からすれば、これはまさしく詐欺行為といえる。東京都が勝手に2020東京五輪に引っかけて、ロゴマークを発信するという。舛添都知事が発表。五輪はまさしくバラバラに動いているように見える。大丈夫なのだろうか。僕達三人は、ヨーカ堂の地下にあるフリースペースでよく癒される。平日などはまさに、至福の時である。船橋君は一人でも良く来るという。一種のパワースポットとも言える。余り人には教えたくない僕達の聖域でもあるのだ。この一角から、安土城天守閣宴会場へのタイムトンネルを通っていくのだが、逆に戦国の世から現代に来る人も多くいる。現代から安土へ。そしてそこを迂回して現代に来る。まさしく、時空を超えたトライアングルゾーン。船橋君が既に行っている安土城に行く前に、安藤と落ち合う約束だったが、いま、小作にいるという。メールでは、なにやら、船橋君の依頼で知人のFさんのレストラン「南国カフェ・シェスタ」の取材に来ているという。その店の居心地の良さに、時間も忘れてしまったという。
「先輩、えらいおそうなって、すんません。取材してたら、ご馳走になってしもたんですわぁ。若い頃はえらいベッピンさんとちゃいます?お客さんもぞろぞろと。帰りとうなくなったんですわ。先輩と安土へいくう約束忘れてしもうて。ミスドーのコーヒーでも奢らせてもらいます・・・」
「なぁ、安藤、いいよいいよ・・・・」
「そな、割カンで・・・」
「奢りでいいよ・・・」
「あっ、こまいのあらへん、先輩やっぱりたのんます・・・」
「しようがないなぁ・・・」
「ところで、ノーベル文学賞、村上はんでっか?
「いや、やっぱりダメだったねぇ」
「そりゃ、そうでっしゃろな。文学者は反骨でなきゃいけませんのや。もろた人は元ジャーナリストの女の作家さんでっしゃろ。やっぱりなぁ、経歴が半端ない。村上はんは、何を訴えたいのかわいにはわからへん」
「見ている人は良く見ているんだってことだよ」
「さ、先輩、温かいコーヒーでも飲まんと・・・」
「船橋はもう信長公と差しでやってるんだろうな・・・」
「わてらの分もでっか・・・」
「安藤、じゃぁ、とにかく、行くとするか・・・」
 僕と安藤は、いざ、安土へ・・・・・。


posted by KURARIN at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする